ISBN-46

2つの思いがある。ひとつは,多くの人たちが懸念しているように,世界全体の保護主義化の動きである。

 ○この12月に日米の中央銀行が競演した金利引き下げ合戦に象徴される世界的な金融緩和の動き,
 ○中進国を中心に見られる工業製品に対する関税引き上げ,
 ○先進国を中心に見られる自動車産業をはじめとした輸出産業に対する公的救済,

などは,戦前の平価切り下げ競争,関税引き上げ競争,産業補助金拡大競争などの近隣窮乏化政策を彷彿させる。前世紀前半,こうした保護主義は,人類に悲惨な結果をもたらした。自由貿易を標榜するブレトンウッズ体制が戦後に構築されたのも,戦前の反省を踏まえてのことである。このような動きにならないように,国際的にも,国内的にも,慎重な配慮が必要になってくるであろう。
 もうひとつの懸念は,「バブルのツケをバブルで返す」式の安易な政策処方で今般の金融危機を乗り越えようとしていないかということである。株価暴落の折にピンと来ないのかもしれないが,今でも「新たなバブル探し」が始まっている気配がある。たぶん世界的には,「環境」がキーワードとなるであろう。今般の金融危機における日本経済の特異な立ち位置を思うと,「超円高」や「超原油安」がキーワードとなって,日本株が投機資金にもみくちゃにされる可能性さえある。

斎藤誠「2008年をふり返って:サブプライムローン問題に起因する金融危機に関する雑感」
http://www.econ.hit-u.ac.jp/~makoto/2008zakkan.htm